染織に関係する言葉は日常の比喩によく使われます。
織り成す 結ぶ 染める・・・
これらは昔は生活のすぐ側に染織があり、その工程を体験することに
よって言葉をより理解し自然に比喩として根付いてきた言葉なのだと
と思います。
でも裂くという言葉は一般的には本来的な感覚は伝わっていない言葉
のひとつかもしれないと先日ワークショップで教えていて感じました。
ある小学生の男の子に
「こんな風に布の端っこをはさみでちょっと切って裂くんだよ。」
「やるやる!!!」
男の子の目は興味深々、輝いています。
でも・・・・
男の子は思いっきり布を裂こうとするのですが布はびくともしません。
もういちど裂き方の説明・・・・・
でもやっぱり裂けません。
裂くというのは布を理解しようという感覚がどこかにないと裂けないものだ
ということが無理やりどうにか裂こうとして裂くことができない男の子の姿
をみていて分かります。
「布がね、ここを裂いてくださいと言っている場所があるから手でそれを
さがしてごらん。」
そうなんです、裂くというのは決して乱暴なことではなく実はとても布に
対する理解をともなう行為。
理解すればいとも簡単に気持ちよく裂くことができるけど
理解しようとしなければ布はびくともしない・・
そして男の子がはじめて布が裂けたときのあのハッとした表情!!
「理解」した瞬間。
そんなふうに考えると「仲を引き裂く」なんて言葉、実際には
やみくもな力では到底無理なんじゃないかな~なんて思えてきます。